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2005年7月26日 (火)

借景

敷地の外にある興味対象の眺めを、敷地内の風景の一部として取り込む技法を借景といいます。京都の円通寺からの比叡山眺めが代表的な例です。単に敷地外の対象を眺められるようにするだけではなく、見切りをつくって対象の一部を切り取って見せることで対象との距離感をなくすようにします。

b 写真は京都の正伝寺からの比叡山の借景です。塀と樹木が見切りとなっています。

 

b もう1枚の写真は正伝寺の外の畑の中からの比叡山の眺めです。2つを比べると、眺める場所の状況で風景の質が大きく変わることがわかります。眺望景観を引き立てるためには身の回りの景観(囲繞景観)の設えが重要です。

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2005年7月24日 (日)

地域個性・地域らしさ

芭蕉の句
   行春を近江の人とおしみける

この句について『去来抄』に次のようなやりとりがあります。

先師曰く「尚白が難に、近江は丹波にも、行春は行歳にもふるべしといへり。汝いかが聞き侍るや。」
去来曰く「尚白が難あたらず。湖水朦朧として春ををしむに便あるべし。殊に今日の上に侍る」と申す。
先師曰く「しかり。古人もこの国に春を愛する事、をさをさ都におとらざる物を。」
去来曰く「この一言心に徹す。行歳近江にゐ給はば、いかでかこの感ましまさん。行春丹波にいまさば、もとよりこの情うかぶまじ。風光の人を感動せしむる事、真なるかな」と申す。

尚白が「近江は丹波にも、行春は行歳にも代えられる」と言ったことについて、去来が反論し、芭蕉が説明を付け加えています。
そこには、琵琶湖の行く春の風景の固有性と地元の人々の思いが示されています(それは同時に、芭蕉自身のその風景に対する愛着でもあります)。

『去来抄』にあるこの芭蕉の句と一節は、観光における地域個性・地域らしさを考えるヒントを与えてくれます。

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2005年7月20日 (水)

名物

名物といわれていたもの(五七五七七で読めます)

江戸の名物
  武士、鰹、大名、小路(こうじ)、生鰯(なまいわし)、茶店、紫、火消、錦絵
 追加があって
  火事、喧嘩、伊勢屋、稲荷に犬の糞

京都の名物
  水、壬生菜(みぶな)、女、染め物、針扇、お寺、豆腐に人形、焼き物

大阪の名物
  舟と橋、お城、惣嫁(そうか)に酒、蕪(かぶら)、石屋、揚屋(あげや)に問屋、植木屋

奈良の名物
  大仏に、鹿の巻筆(まきふで)、奈良晒(ならざらし)、春日灯籠(かすがどうろう)、町の早起き

これらを見ると、土地土地の名物は町の風景や生活の風景の中にあるといえそうです。観光客用に拵えたものではなく、地域の実相、つまりリアリズムの中に面白さがあります。
もちろん、町に元気がなければ生きた魅力は伝わりません。

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2005年7月17日 (日)

道の駅と日帰り温泉

道の駅と並んで各地に増えているのが日帰り温泉施設です。いわゆる温泉地にもありますが、そうでないところの自治体が整備するものが増えてきています。

道の駅は24時間トイレが使えますから、自動車で旅行をしていて適当な泊まる場所が見つからなければ、道の駅で夜明かしするのも一つの方法です。ところが、そのような緊急避難的な利用ではなく、はじめから道の駅で泊まる予定で来る人も見られます。彼らは食事をつくるための準備もしてきています。また、日帰り温泉施設を利用すれば風呂にも入れるわけです。

つまり、道の駅が機能的にはオートキャンプ場と化すわけです。そこには旅行者の知恵とたくましさがあります。

安上がりだから利用するものもいますが、自由な旅行スタイルにあった宿泊施設がないのでこのような利用をしているものも少なくありません。やはり、夜は布団やベッドで寝たいのです。宿泊施設の側にも知恵が必要かもしれません。

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2005年7月12日 (火)

道の駅とトイレ

各地に道の駅が設置され、平成16年8月時点で785駅の「道の駅」が登録されています。道の駅の制度ができたおかげで、それまで沿線に立ち寄るところがなかった町村にも立ち寄る場所ができ、自動車利用者にとって便利になりました。

道の駅にある施設は各地で様々ですが、どの駅にも共通し、一番重要な機能はトイレといえるでしょう。民間のドライブインのようなものであれば、トイレだけ利用させてもられるかな、何か買わないといけないのかな、などと気を使うことも少なくありませんが、道の駅では気兼ねなく立ち寄って利用できます。
さらに、トイレがきれいということも重要なポイントです。トイレが快適に利用できるかどうかで気分はだいぶ違います。

道の駅の中には、農産物の直売所や特産品等の売店、レストランなどを設置し、道の駅を地域振興にうまく結びつけているところが少なくありませんが、気軽に立ち寄ってトイレを快適に利用できるという点が、立寄り客を増やし、売上げに貢献しているわけです。

つまり、道の駅という看板が、きれいなトイレを気兼ねなく利用できるという安心感を情報化しているわけです。

しかしながら、最近、管理が行き届かない道の駅(のトイレ)が見られるようになってきています。それは利用者にとってマイナスになるだけでなく、放っておくと道の駅のイメージを低下させ、やがてそれが地域にとってマイナスに作用することになりかねません。

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2005年7月10日 (日)

古代ローマの聖職者の旅行

古代ローマでキリスト教が国教となると、聖職者たちは官僚機構のような組織をつくりだし、教会の務めで帝国のあちこちを訪れることになりますが、教会関係者に旅の便宜が図られるようになると、旅の不便さを被ることは少なくなりました。

そうすると用もなく、というより個人的な楽しみで旅行をする教会関係者が増えてきて、そのような輩を抑えようとするお達しがでることになります。
そのことが逆に私用旅行の多さを物語ることになります。

現代でも、議員や役人、公的機関の役員や職員などが、視察等を理由にして遊びの旅行することが後を絶ちません。一応建前は公務だから、視察報告がつくられますが、作成するのは旅行代理店というようなことも珍しくありません。

特権を私的に利用しようという輩は古代から変わらないわけです。

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2005年7月 7日 (木)

観光旅行の効果

貝原益軒の『楽訓』の中の一節に「旅行をして他郷にあそび、名勝の地、山水のうるはしき佳境にのぞめば、良心を感じおこし、鄙吝をあらひすヽぐ助となれり。」とあります。
また、近代旅行業の祖といわれているイギリスのトーマス・クックは、「観光旅行における身体的、道徳的、社会的側面(1860年)」の中で「旅をつづけながら、快かったことといえば、偏見の壁が取りのぞかれ、邪悪な感情と気分が一掃され、知性が広がり、知識が身につき、読書欲が起こり、同胞のおかれた境遇や苦しみが以前にまして理解でき、いたわりの共感が生まれ、労苦に耐え、困難にめげず、・・・・あわせて他のもろもろの名状しがたい有益な感化を体験するのを目の当たりにすることだった。」(蛭川久康著『トマス・クックの肖像』より)と記しています。

どちらも観光旅行をすることにより心がゆたかになるという効果を認識していたという点で優れており、心がゆたかになることが相互理解を生み平和につながってゆきます。
国連が1967年を「国際観光年」に定め「観光は平和へのパスポート(Tourism, Passport for Peace)」というスローガンを掲げた理由もこの点にあるわけです。宴会旅行や買春旅行、金にまかせただけの旅行などは、歓楽旅行であって観光旅行ではありません。

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2005年7月 4日 (月)

観光のはじまり

観光というのは、単にどこかへ出かけて行くことではありません。日常の居住域を離れ(昔はこれを“旅”あるいは“旅にある”と言いました)、自由な時間(余暇時間)の中で、訪れた地域の風景や文物、人などに出会い様々な体験をして、感動したり、楽しんだり、新たな発見をしたりなどすることで、それにより体験者の精神や肉体にプラスの効果がもたらされるものです。したがって、観光は精神的な部分が関わった行為なので、外観や単なる足跡からは捉えることができません。

「観光のはじまりはいつか」という問いに対し、「人類の誕生後間もない頃からあったと思われる」とか、「動物も観光をすることがあるらしい」とかいうような答えは意味がありません。なぜならば、証明できないからです。
観光が精神的な部分に関わる行為である以上、ある行為が観光かどうかは、文字によって表現されない限り判断できません。つまり、観光のはじまりは、“文字を持った文明の発生以降”ということになります。

では、現在わかっている最も古い観光の記録はいつか?
それは古代エジプトの時代に認められます。巨大建造物に残された落書き(グラフィティ)にあります。

今は落書きはいけませんが、当時の落書きが記録を残してくれました。今は落書きの変わりにノートなどをおいて、記念に書き込めるようにしていますが、旅先で記念に何かを残したいという欲求を満たす一つの方法といえます。

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